東京・神保町やその周辺エリアにおいて、独自の存在感を放ち続けてきた老舗書店として知られる芳賀書店本店。アダルトDVDや成人向け書籍、グッズを取り扱う店舗として広く知られていますが、その歴史を紐解くと、昭和のカルチャーシーンや出版史に深く刻まれたいくつもの重要なトピックが見えてきます。特に「ビニ本発祥の店」としてのルーツや、文学史に残る名著の刊行、そして近年の法人分割に至るまでの道のりは、日本の成人向けカルチャーや出版業界の変遷を語る上で欠かせない要素です。
本記事では、芳賀書店本店の歴史的背景から、出版部門である株式会社Jパブリッシングの独立、そして近年の動向に至るまでの実態を分かりやすく紐解いていきます。当時の時代背景や業界構造を踏まえながら、その歩みを多角的に検証していきましょう。
芳賀書店本店と「ビニ本発祥の店」と呼ばれる歴史的背景

芳賀書店本店が「ビニ本発祥の店」と称される所以は、1970年代末から1980年代初頭にかけて巻き起こった成人向け写真集ブームの中心に位置していたことにあります。当時の日本において、成人向け雑誌や書籍の流通や陳列方法には独自の模索があり、同店はその潮流の中で重要な役割を果たしました。
透明なビニールで包装された成人向け雑誌や写真集、いわゆる「ビニ本」の文化が形成されていく過程において、同店は業界のトレンドを牽引する存在として知られるようになります。単なる一小売店という枠を超え、時代のサブカルチャーや風俗史の文脈において、その名はひとつの象徴的な存在として定着していきました。
出版部門の足跡:寺山修司のベストセラー『書を捨てよ町へ出よう』の刊行
成人向け書籍の取り扱いで知られる一方、芳賀書店の歴史を語る上で見逃せないのが、1960年代における活発な出版活動です。特に特筆すべき実績として、1967年に芳賀書店が刊行した寺山修司の著書『書を捨てよ町へ出よう』があげられます。
同書は当時の若者たちに絶大な影響を与え、社会的なムーブメントを巻き起こすベストセラーとなりました。前衛芸術やアンダーグラウンドカルチャーが花開いた時代背景の中で、同社は成人向け市場だけでなく、時代の先端を行く文学や思想の分野においても大きな足跡を残していたのです。
芳賀書店本店の歩みと主な沿革
これまでの歴史において、芳賀書店本店が歩んできた主な経緯や出来事を分かりやすく整理するため、以下の表にまとめました。
| 時期・年代 | 出来事・主なトピック | 備考・詳細 |
|---|---|---|
| 1967年 | 寺山修司の『書を捨てよ町へ出よう』を刊行 | 出版部門から世に送り出され、時代を代表するベストセラーとなる |
| 1970年代末〜1980年代初頭 | 「ビニ本」ブームの中心地として認知される | アダルト写真集や成人向け書籍の販売を通じて「ビニ本発祥の店」と呼ばれる |
| 2015年 | 経営体制の変更 | 急激な改革の反動等を経て、2代目社長の妻である芳賀紀子に社長が交代(3代目は専務に) |
| 2016年3月 | 出版部門の独立(株式会社Jパブリッシング設立) | 出版部門が「株式会社Jパブリッシング」として切り離され、独立した事業体制へ移行 |
経営体制の変化と出版部門の独立(Jパブリッシングへの移行)
長年にわたり店舗運営と出版事業を並行して展開してきた同社ですが、2010年代半ばに入り大きな転換期を迎えます。報道や公開情報によると、2015年には組織の改革や経営体制の見直しが行われ、2代目社長の妻である芳賀紀子へと社長が交代する人事が行われました。
さらに大きな動きとなったのが、翌2016年3月における出版部門の切り離しです。これにより、出版事業は「株式会社Jパブリッシング」として完全に独立することになりました。Jパブリッシングは設立当初、芳賀書店の本店と同じ「芳賀書店ビル」の6階に拠点を置いていましたが、のちに千代田区九段北(九段北325ビル5階)へと移転し、現在に至るまで独自の出版活動を展開しています。
近年の動向とリアルな実態
現在の芳賀書店本店は、アダルトDVDや成人向け書籍、グッズを取り扱う専門書店としての店舗営業を継続しつつ、時代のデジタル化や流通の変化に対応した営業を続けています。かつての「ビニ本発祥の店」としての伝説的な側面を持ちながらも、実店舗としての役割を着実に守り続けている点が特徴です。
また、かつての出版部門がJパブリッシングとして独立したことにより、小売部門と出版部門がそれぞれの領域で専門性を高める体制へと移行しました。インターネットや電子書籍が主流となった現代においても、街の老舗書店としての歴史的重みと現在の営業実態は、多くのサブカルチャーファンや研究者の関心を集め続けています。
【芳賀書店本店】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:芳賀書店本店は現在も営業していますか?
A1:はい、アダルトDVDや成人向け書籍などを取り扱う店舗として現在も営業を続けており、業界の老舗として知られています。
Q2:「ビニ本発祥の店」と呼ばれるのはなぜですか?
A2:1970年代末から1980年代初頭にかけてのアダルト写真集ブームにおいて、透明なビニールで包装された成人向け書籍の流通・販売の中心地として広く認知されたためです。
Q3:出版部門であるJパブリッシングとの関係はどうなっていますか?
A3:2016年3月に出版部門が「株式会社Jパブリッシング」として独立し、現在は別法人として事業を行っています。なお、かつては同じ芳賀書店ビル内に拠点を置いていましたが、現在は千代田区九段北に移転しています。
芳賀書店本店の歴史は、単なる一店舗の変遷にとどまらず、昭和から平成、そして令和に至る日本の成人向けカルチャーや出版流通の歴史そのものを映し出す鏡といえます。寺山修司の著作を世に送り出した優れた出版機能と、「ビニ本発祥の店」としての強烈なサブカルチャー的アイデンティティは、日本の出版史において特異な足跡を残しました。
2016年のJパブリッシング独立を経て、それぞれの道で専門性を深める同社の歩みは、変化の激しい現代のメディア環境において、老舗がどのように自らのアイデンティティを守りながら存続していくかを示す好例となっています。